1: 以下、5ちゃんねるからVIPがお送りします 2021/04/12(月) 22:01:49.356
夫「ありがとう」
妻「浮気したら……呪うからね」
夫「え」
妻「私自身を……。呪って呪って呪って……塵芥(ちりあくた)も残さない……」
夫「す、するわけないだろ! 自分を呪っちゃダメだよ! 行ってきまーす!」
妻「行ってらっしゃい……うふふふ……」
妻「洗濯機にお洋服を入れまして……」
妻「自作の洗剤を入れまして……」パッパッ
グツグツ… ボコボコ…
妻「ぐ~るぐる、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる、ぐ~るぐる……」
妻「この渦……いつまでも見てられる……」
妻「うん……キレイになった」ニッコリ
妻「あら」
黒猫「ニャーン」タタタッ
妻「黒猫が横切った……幸先いい……うふふふ」
主婦「あら奥さん、おはよう。相変わらず全身黒ずくめね」
妻「黒が……一番落ちつくから」
主婦「たしかにしっとりしててよく似合ってるわ」
妻「うふふふ……ありがとう」
妻「こんにちは……」
店主「今日はいい牛肉仕入れてるよ!」
妻「じゃあ牛を……200グラム」
妻「それと豚を……400グラム」
店主「毎度ぉ!」
店主(この注文の仕方、最初は面食らったけど今ではすっかり慣れちまった)
同僚「お、愛妻弁当か」
夫「ああ」
同僚「うおお……相変わらず真っ黒な弁当箱だな」
後輩女「ホントですね。お葬式の棺みたい!」
夫「ちなみに開けると……」パカッ
モワァァァァ…
なにやら煙が出てくる。
同僚「なんだこれ!?」
夫「演出としてドライアイスでも仕込んでくれてるんだろう」
同僚「凝りすぎだろ!」
ドヨーン…
夫「この通り」
同僚「く、黒い……!」
後輩女「やだ~! 超ブラックじゃないですか~! 光まで吸収しそう!」
夫「この世にここまで黒い弁当も他にないだろうな」
中間おすすめ記事: 思考ちゃんねる
.mm-ttl{ font-size:14px; margin-bottom: 15px;}
.mm-ttl .Ttl-mil{ font-size:14px !important; color: gray;}
.mm-ttl .Ttl-mil span{ color: rgb(0, 128, 0); font-size: 15px !important; font-weight: bold;}
.at_out ul{-webkit-padding-start: 0; margin: 0 !important; padding: 0;}
.at_out li{ list-style-type:none !important; font-size:16px; line-height:1.2; font-weight: bold; margin-left: 0 !important; margin-bottom: 20px !important;}
.at_out li a{ text-decoration:underline; color:rgb(0, 102, 204); list-style-type:none;}
.pc_none{ display:none;}
.sp_none{ display:block;}
後輩女「絶対体に悪いですよ! やめた方がいいです!」
夫「いや、黒いだけで味はいいんだよ」モグッ
夫「体もさ、健康診断は全ていい数値だったし」
同僚「一口いいか?」
夫「どうぞ」
同僚「……ホントだ、うまい! どういう仕組みなんだよ!?」
夫「きっと研究に研究を重ねた結果だろうな……」
同僚「遠い目をしてしみじみ語るなよ」
夫「ああ、黒いよ」
同僚「前々から思ってたんだけど……お前の奥さん、ひょっとして“魔女”なんじゃねえの?」
夫「魔女?」
同僚「奥さんとはたしか大学で知り合ったんだろ?」
夫「ああ、二人とも≪魔法サークル≫に入っててさ」
後輩女「なんですか、それぇ?」
夫「中世近世における魔女だとか魔法だとかを研究するサークルだよ」
後輩女「コワ~イ。生贄の儀式とかやってたんですか?」
夫「いやいや、そんな怪しいサークルじゃないよ。歴史研究サークルみたいなもんだったし」
夫「変わってるというか……今みたいな感じではあったよ」
同僚「ほらぁ、やっぱり魔女なんだよ!」
後輩女「絶対そうですよ! 奥様は魔女ってやつです!」
夫「そんなことないってー」
…………
……
夫「ただいま」
妻「お帰りなさい……今お料理してる。いい材料が手に入ったから……」
グツグツ… ボコボコ… ドロドロ…
鍋に紫色の汁が出来上がっている。
妻「はい……どうぞ」ゴポ…
夫「い、いただきます」グビッ
夫「うまい!」
夫(こんな色なのにどうしてうまいんだろう……謎だ)
妻「どうしたの?」
夫「首がこって……今日はずっとパソコンに向かってたから」
妻「じゃあ……首絞めてあげる」
夫「え」
ギュッ…
甘く首を絞める。
妻「どう……?」ギュッギュッギュッ
夫「う……ぐ……き、気持ちいいっ!」
妻「もっともっと……首の筋肉をこの五指で……」ギュギュギュッ
夫「もっと絞めてぇぇぇ!」
TV『頑張れ! 応援してるからな!』
妻「ぐふぅぅ……泣ける」
夫(あーあ、ボロ泣きしてる)
夫(妻はいつも黒い服を着て、毒々しい色の料理を作り、雰囲気も異様だけど……)
夫(俺にとってはとても素晴らしい妻だ)
夫(絶対魔女なんかじゃない……)
課長「ちょっと来て」
後輩女「はーい」
課長「なんだねこれは? ひどい出来栄えじゃないか」
後輩女「え、ですが、ちゃんと課長のいうとおりに……」
課長「どこがだね! ええ? ミスを人のせいにしちゃいかんよ!」
後輩女「でも……」
夫「…………」
課長「え?」
夫「ほら、課長のメールも残ってます。こっちにも送られてきてたんで」
課長「あ……!」
課長「す、すまなかった。私の指示がおかしかったようだ」
後輩女「いえ……」
後輩女「ありがとうございました! 助かりましたっ!」
夫「いやいや、悪いのは課長だったんだから」
妻(今日の買い物、終わり……。いつも通らない道を通ろうかな……)
妻(幽霊に出会えたりして……)
妻「あら?」
不良「ちょっと金貸してくれよ」
中学生「も、持ってません……」
不良「じゃあ、ポケットに入ってるもん全部出せよ! 出さねえとパンチ入れっぞ!」
妻「…………」
不良「あ?」
妻「お金なら……あるけど」
不良「お、マジかよ? 恵んでくれよ」
妻「ただし……全部1円玉だけど」ジャラッ
不良「え……」
妻「これを……こうしてストッキングに入れると……」ジャラジャラ…
不良「ちょ、ちょっと……待っ……」
ヒュンッ! ヒュンヒュンッ!
まるでヌンチャクのように振り回す。
妻「恵んであげようか?」ヒュヒュヒュヒュヒュッ
不良「ひっ……!」
不良「た、助けてくれえっ!」タタタッ
妻「……大丈夫だった?」
中学生「あっ、ありがとうございます!」
妻「うふふ……気をつけて帰ってね」
妻「あら……今日はご機嫌ね」
夫「分かる?」
妻「なぜ機嫌がいいのか……教えてもらえる?」
夫「後輩の女の子が理不尽に怒られてるところを助けたんだ」
妻「まあ……それはとてもいいことね」
夫「君こそ機嫌よさそうじゃないか」
妻「分かる? 私も……不良に絡まれてる男の子を助けたの」
妻「あの逃げていく不良の目……恐怖にまみれてたわ」
夫「いいことすると気持ちがいいね!」
妻「うん……。うふふふふ……」
後輩女「あれ? なんでこうなっちゃうのぉ? 分からない……!」モタモタ
夫「どうしたの?」
後輩女「データ入力やってたら、変な画面になっちゃいましてぇ……」
夫「ああ、これはきっとここをクリックしちゃったんだな」
夫「こうすれば……元通り!」カタカタッ
後輩女「ありがとうございます!」
夫「エンター押す時はちょっと強めに! ……なーんて」カタカタッターン
後輩女「やだ、先輩ったら!」
後輩女「この前の課長との件も、あたしの作業が遅いから、ああなった部分もありますし……」
後輩女「事務職として雇われたのにパソコン苦手じゃ、話にならないですよね……」
夫「…………」
夫「よかったら、たまにパソコンを教えようか?」
後輩女「えっ、いいんですか!?」
夫「うん、悩んでる後輩を放ってはおけないしね」
後輩女「ありがとうございますぅ!」
夫「ただいまー」
妻「お帰りなさい……」
妻「このところ……帰りが遅いけどどうしたの?」
夫「ああ、後輩の女の子がパソコンが苦手だって悩んでてね。ちょっと会社で教えてるんだ」
妻「そう……浮気じゃないよね?」
夫「まさか。浮気なわけあるもんか」
妻「なら……いいけど」
妻「ええ、今日は自作の入浴剤を入れてみたの……」
風呂に向かうと――
ドヨーン…
浴槽の湯は毒々しい紫色に染まっていた。
夫「実に……君らしいお風呂だね」
妻「うふふふふ……呪われし湯が五臓六腑を癒やしてくれるはず……」
夫「…………」
同僚「おーい」
夫「…………」
同僚「おーい!」
夫「な、なんだよ。大声で。普通に呼びかけてくれよ」
同僚「なにいってんだ。普通に呼びかけても反応しなかったじゃないか」
夫「あ、そうだったのか。……ごめん」
同僚「大丈夫かよ」
夫「そ、そうかな」
後輩女「そうですよ。一度お医者さんに診てもらった方がいいです!」
同僚「そうそう、それがいいって!」
夫「やだなぁ、大げさだよ。健康診断は問題なかったし」
同僚「いや、一度行った方がいいよ。自覚症状あるんならなおさらだ」
夫「うん……どこかで病院行ってみるか」
同僚「だったらいい病院紹介してやるよ。まだ若いけど、腕はいいってお医者をさ」
医者「どうも、名医です」
夫(自分でいうのか……)
医者「今日はどうされました?」
夫「最近ひどく疲れていて……」
医者「それはいけませんね。さっそく……精密検査しましょう!」
夫「お願いします」
医者「レッツ精密!」
夫(そこは『レッツ検査』じゃないのか?)
夫「どうでした?」
医者「特に……異常はなかったですねえ……。どういうことなんだ……」
夫「そうですか……」
医者「期待にそえず申し訳ない!」
夫「いえ、そんな……」
医者「とりあえずビタミン剤出しておきますから! とりビー!」
夫「とりあえずビールみたいにいわないで下さい」
妻『…………』
夫『どうした、こっち向いてくれよ』ポンポン
妻『なぁに?』グルンッ
振り向いた顔は――
夫『わぁぁぁっ、化け物!』
夫「はぁ、はぁ、はぁ……夢か」
妻「…………」スースー…
夫「…………」
後輩女「すみません、今日もパソコン教えて下さい!」
夫「ああ、いいよ。今日はもう少し難しい内容を教えるよ」
夫「…………」クラッ
後輩女「だ、大丈夫ですか!?」
夫「ああ、すまない。大丈夫だよ……」
後輩女「…………」
後輩女「あのぉ、あまりこんなこといいたくないんですけど……」
夫「なにをいってるんだ……?」
後輩女「あたし……ちょっと図書館で調べてみたんです。魔女のこと……」
夫「魔女……」
後輩女「そうしたら、魔女は知らず知らずのうちに男を誘惑して、自分に振り向かせて」
後輩女「最後には心も体も自分のものにしてしまう……そんなことが書かれてたんです。怖いでしょ?」
夫「え……」
後輩女「これ読んだ時、先輩のことが思い浮かんでしまって……」
後輩女「知らず知らず、先輩の体力を奪って……」
夫「そんなこと……ないって……」
後輩女「でも……!」
夫「いいから……。さ、今日はリストの作り方を教えるよ……」フラフラ
後輩女「はい……」
後輩女「何かあったら、あたしが先輩を守りますからね!」
夫「ハ、ハハ……ありがとう」
夫「ただいま……」
妻「お帰りなさい……」
妻「ご飯……できてるわよ。私の怨念のこもったお料理が……」
ドロッ…
相変わらずの心のこもった毒々しい料理。
夫「…………」
夫「いや、今日はもう寝るよ……。ごめん……」
夫(体が重い……だるい……。一体どうしちゃったんだ……)
夫(ビタミン剤はちゃんと飲んでるのに……)パクッ
夫「今日も……パソコン教えるよ」
後輩女「はいっ、よろしくお願いします!」
夫「まず、ここは……」
夫「どう? 分かった?」
後輩女「とってもよく分かりましたぁ!」
夫「じゃあ、今日はこの辺で……」フラッ
後輩女「はいっ!」
夫(やっと……家についた……)
妻「お帰りなさい……」
妻「あなた……どうしたの? ゾンビみたいにフラフラじゃない……」
夫「いや……大丈夫だよ。病院の検査じゃなんともなかったんだから……」
夫「おやすみ……」
妻「…………」
眠る夫を暗い目で睨みつける。
夫(頭がぼんやりする……)
夫(俺……どうしちゃったんだろう……。自分の体が自分の物じゃないみたいな……)
同僚「じゃ、俺先に帰るけど……お前も早く帰れよな」
夫「ああ、ありがとう……」
後輩女「先輩、今日もパソコン教えてもらっていいですかぁ?」
夫「もちろん、いいとも!」
後輩女「出来ました!」
夫「これで……このソフトはバッチリだね。きりがいいし今日は……ここまでにしよう」
後輩女「待って下さい!」
夫「ん……?」
後輩女「帰らないで下さいよ」
夫「だけど、妻が……」
後輩女「先輩、もう奥さんなんかどうでもいいじゃないですか」
夫「へ……?」
後輩女「あたしと……一緒になりましょうよ」
後輩女「この際、奥さんとは離婚しちゃいましょう」
夫「なにをバカなことを……」
後輩女「魔女を気取ってるふざけた奥さんに、先輩を旦那にする資格なんてありませんよ」
夫(反論したいが……頭が……)
後輩女「もう意識を保つのも難しいでしょ」クスッ
後輩女「その方がいいんです。あたしがあなたを幸せにしてあげます」
後輩女「さぁ……あたしの胸に飛び込んできて……」
夫「うう……」フラフラ
後輩女「そう、それでいいの。あなたはもう何も考えられない――」
妻「あなたッ!」
後輩女「!」
妻「あなた……しっかりして……」
後輩女「あれ、もしかして奥さんですかぁ? なに会社まで来ちゃってるんですか。非常識ですねぇ」
妻「私の夫をどうしたの……!」
後輩女「ああ、この人ですか? この通り骨抜きにしてあげました」
夫「…………」ボケー
後輩女「夫の身を案じて、ここまで駆けつけたのは大したもんです」
後輩女「だけど一歩遅かったですね。もうあなたの声が届くことがありませんよ」
後輩女「あたし? 奥さんもよくご存じのはず」
後輩女「あたしはね……魔女ですよ。正真正銘、本物のね」
妻「魔女……!」
後輩女「奥さん、噂にたがわず黒い服を着て魔女みたいな格好ですね」
後輩女「ですけど、本物の魔女はそんなあからさまに怪しい格好なんてしません」
後輩女「あたしみたいに……本性を隠してひっそりこっそり生きてくんです」
後輩女「魔女だとバレること、それは迫害につながりますからね」
妻「…………!」
妻はかつて研究していた魔女狩りの歴史を思い出す。
後輩女「決まってるじゃないですか。あたしもこの人に惚れちゃったんです」
後輩女「だから……あなたから“奪う”ことしたの」
後輩女「魔女は惚れた男を誘惑し、体力を奪い、時には悪夢を見せ、徐々に徐々に衰弱させていく」
後輩女「先輩はいい人ですからね。実にやりやすかったですよ」クスクス
後輩女「魔女であり、本能的に機械が苦手なあたしにも、分かりやすくパソコンを教えてくれるほどに」
後輩女「後は……心を奪うだけ」
妻「やめて!」
後輩女「やめませんよ。この人はもうあたしのものです」
後輩女「いったでしょ。あたしは本物の魔女だって」
バリバリッ!
妻「あぐ、う……!」
見えない何かに縛られる。
後輩女「心と体を同時に縛る術です。もう動けませんよ」
妻「……あ、なた……」
後輩女「へえ、すごい。心が壊れてもいいかぐらいのつもりでかけたのに」
後輩女「魔女の真似っこしてるのは伊達じゃないみたい」
後輩女「だけどあたしにとって、あなたはしょせんコスプレ魔女に過ぎないってことです」
後輩女「さあて、いよいよ仕上げにかかりましょうか」
夫「…………」
後輩女「身も心も魂も、私のものになれ!」
ズボォッ!
右手が胸の中に埋め込まれる。
妻「あなたっ……!」
後輩女「あたしの細工で、この人の心にはあなたへの疑念が高まっているはず」ズブズブズブ…
後輩女「ほんの少しでも心があたしに向いてれば、もう逆らうことは不可能ッ!」
後輩女「アハハハーッ! 先輩、これからはあたしだけを見て下さいッ!」
ズブブブ…
後輩女「おかしい……心を奪えない。どうして!? 何が起きてんの!?」
心の中を探る。
『妻を愛してる』
後輩女「え?」
『妻を愛してる』
後輩女「なに? なんなのこれ?」
『 妻 を 愛 し て る 』
後輩女「いやぁぁぁぁぁ! 疑念が……ないッ!」
後輩女「ウソ……弾かれた……!」
妻「あなた……!」
夫「……んん」
後輩女「どうして……どうしてあたしの術が効かないの!」
夫「君の声は……ずっと聞こえてたよ」
後輩女「えっ!」
夫「君の術が効かなかった理由は一つ……俺は妻を愛してるからだ」
後輩女「!」
夫「君がどんな魔法を使おうと、妻に対する愛だけはどうすることもできない!」
後輩女「…………!」
夫「会社まで来てくれたのか」ヨロ…
妻「心配だったから……」
ギュッ…
抱きしめ合う夫婦。
後輩女(負けた……完敗だ)
後輩女(あたしが魔女としての力をフルに使って誘惑したのに、先輩はあたしに振り向かなかった)
後輩女(あの奥さんこそ、本当の魔女なのかもね)
後輩女「先輩、奪っていた体力はお返しします」パァァァ…
夫「あ……ありがとう」
夫「うおおおおっ! 元気が出てきた!」シャキーン
妻「まるで栄養ドリンクのCMみたい……」
後輩女「それじゃあたしはこれで失礼します」
夫「どこへ行くんだ?」
後輩女「あたしは……この会社を去ります」
後輩女「正体をカミングアウトしちゃいましたし、なによりあなた方の近くにいる資格はありません」
後輩女「もう二度と現れませんから安心して下さい」
夫「…………」
後輩女「へ?」
妻「せっかく魔女に会えたのに……もう行ってしまうなんて寂しい。行かないで」
後輩女「ハァ? なにをいってんです? あたしはあなたの旦那を誘惑したんですよ」
後輩女「どこの世界にそんな女を許す人がいるんですか」
妻「だけど、もう反省したんでしょう……? ねえ、あなた……?」
夫「うん。その様子じゃ、魔女の力で悪さをしたのはこれが初めてだろうし……」
夫「それにせっかくパソコンが上達したじゃないか。このまま辞めるんじゃもったいない」
夫「ぜひ、会社に残って欲しい」
後輩女(なんなの……この夫婦!)
妻「だからこそ……こうして魔女らしい格好をして、魔女らしい仕草をしてきたの」
妻「ぜひ、本物の魔女から勉強をしたい……」
後輩女「ですけど……」
夫「俺からもお願いするよ。妻の頼みを叶えてあげてくれ」
後輩女「は、はぁ……なら、辞めません」
妻「うふふふ……嬉しいわぁ」
後輩女「…………」ゾクッ
後輩女(って、本物の魔女であるあたしが気圧されてどうするの!)
妻「なんでも聞いて」
後輩女「奥さん。あなたはなぜ、魔女の真似なんかを?」
妻「私ね、昔いじめを受けてたの……」
後輩女「え」
妻「『暗い』『気持ち悪い』って……。『キノコ栽培できそう』って胞子を振りかけられたこともあった……」
妻「だけどある日、『魔女』っていわれたことで、私は吹っ切れたの」
妻「いっそ、“魔女”になってやろうって……」
『や、やめろぉ! やめてくれぇ!』
妻「私は徹底的に“魔女”になりきって……いじめを撃退した」
妻「それ以来、魔女は私にとって憧れであり、私を救ってくれた象徴なの……」
夫「その後、俺たちは大学のサークルで知り合ったんだ」
夫「どっちが先に惚れたんだと聞かれたら、はっきりいって俺の一目惚れだったよ」
妻「こんなこといわれて嬉しいかは分からないけど……私は魔女のおかげで幸せになれたの」
後輩女「…………」
夫「ど、どうしたの!?」
後輩女「あたし、感動しました!」
妻「感動……?」
後輩女「いじめを克服して、しかも魔女のことをそこまでよく思ってくれてるなんて!」
後輩女「ぜひ、お友達になって下さい!」
妻「嬉しいわ……ママ友ならぬ“マジョ友”になりましょう」
後輩女「はいっ!」
夫(よかったよかった……)
夫「…………」カタカタッ
夫「…………」ッターンッ
同僚「おお、すっかり元気を取り戻したな。エンターキーが快音響かせてるぜ」
夫「心配かけてすまない。もう大丈夫だ」
同僚「結局なんだったんだ?」
夫「きっと疲れてただけだよ。それなりにプレッシャーもかかってたからな」
同僚「精神的なものってやつか」
後輩女「こんにちは、遊びに来ちゃいました!」
妻「いらっしゃい……」
後輩女「今日は魔女が実際に作ってた、薬品の調合をお教えします!」
妻「ありがとう……」
後輩女「これを飲ませれば、先輩ますます元気になって……特に夜なんかもう……」
妻「うふふふ……楽しみ」
夫(いったいどんな話をしてるんだろう)
妻「うん……本物の魔女なのに私より明るいくらいだもの」
夫「あんな事件を起こしたけど、素の彼女はとてもいい子だからね」
妻「きっと……魔女として色々と辛い目にあったんでしょうね」
夫「いい人を見つけて幸せになってくれるといいんだけど……」
妻「私、祈る……。彼女のために……」
夫「俺も手伝うよ」
怪しげな魔法陣を描き、怪しげな呪文を唱える夫婦であった。
……
夫「え、体調が悪い?」
妻「うん……」
夫「だったら俺もお世話になったお医者さんに行ったらどうかな」
妻「そうする……。場所を教えてくれる?」
医者「どうも、名医です」
妻(自分でいうんだ……)
医者「今日はどうされました?」
妻「近頃体調が優れなくて……」
医者「それはいけませんね。さっそく……精密検査しましょう!」
妻「お願いします」
医者「レッツ精密!」
妻(そこは『レッツ検査』じゃないの……?)
夫「病院行ってきた? どうだった?」
妻「実は……」
少し頬を染める。
妻「私の体内に……新しい生命が宿ってるって」
夫「おめでとう!」
妻「ありがとう……あなた」
妻「お腹の中に私たちの子供が作り上げられてると思うと……笑みが止められない」ニッコリ
夫「食器の片付けは俺がやるよ」ガチャガチャ
妻「ありがと……」
妻「うっ!」
夫「どうしたの?」
妻「う、ううっ……! お腹が……!」
夫「予定よりだいぶ早いな……すぐ病院に連れてくよ!」
夫「くそっ……! 全然進まない……!」
夫(しくじった……! 救急車を呼ぶべきだった……!)
夫「大丈夫!?」
妻「え、ええ……平気」
夫(顔が青ざめてる……まずい)
夫(このままじゃ、妻もお腹の中の子も――)
キィィィィィン…
夫「ん?」
後輩女「せんぱーい!」
夫「――あ、あれは!?」
ホウキに乗って後輩女が飛んできた。
夫「ど、どうしたの……!?」
後輩女「約束したじゃないですか。先輩を守るって。奥さんを守ることも先輩を守ることです」
後輩女「奥さんの生命に乱れを感じたので、Myホウキで飛んできちゃいました!」
夫「魔女ってそんなこともできるんだ!」
後輩女「奥さんを乗せて下さい!」
夫「え、と……今苦しんでるから上手く乗れるかどうか……」
後輩女「それは大丈夫です。あたしが制御してるのでタクシーより快適です!」
夫「ありがとう!」
妻「ぜひ、乗せてもらうわ」ニッコリ
夫(苦しいはずなのに、ものすごく嬉しそうだ)
空を眺める医者。
医者「うーん、素晴らしい青空だ……。宇宙の果てまで見えちゃうような……」
医者「こういう日はなにか空から贈り物が降ってきたりして……」
医者「たとえば、空から女の子とか……。まさかな、アニメ映画じゃあるまいし」
医者「ん?」
ヒュゥゥゥゥゥ…
医者「な、なんだ!?」
――シュザァッ!
後輩女「子供が産まれそうなの! 早く出産させてあげて!」
医者「えええええ!?」
夫「頑張れ! 俺がついてる!」
妻「うん……心強いよ……。みるみるどす黒い力が湧いてくる……」
手を握り締める。
医者「名医として、無事出産させてみせる!」
後輩女「頼みましたよ!」
…………
……
夫「産まれた……!」
妻「うふふふ……苦難と困難に満ちた世にようこそ……」
夫「実に君らしい祝福の言葉だね」
微笑み合う二人。
後輩女「やったーっ! 産まれたーっ!」
医者「元気な男の子です。これも名医である私の力あってこそ!」
後輩女「イェーイ!」
医者「イェーイ!」
パシッ!
なぜかハイタッチする二人。
妻「お腹がすいたみたい……」
妻「じゃあ……私の血液から作られたミルクを……飲ませてあげようかな。たっぷり飲んでね……」
夫「実に君らしい飲ませ方だね」
赤子「きゃっきゃっ」
―おわり―
ちょいと怖いがいい奥さんだった
1001: 思考ちゃんねる
.ninki{ clear:both; margin-bottom: 15px;}
.mm-ttl{ font-size:14px;}
.mm-ttl .Ttl-mil{ font-size:15px !important; color: gray;}
.mm-ttl .Ttl-mil span{ color: rgb(0 128 0); font-size: 15px !important; font-weight: bold;}
.at_out ul{-webkit-padding-start: 0; margin: 0 !important; padding: 0;}
.at_out li{ list-style-type:none !important; font-size:16px; line-height:1.2; font-weight: bold; margin-left: 0 !important; margin-bottom: 20px !important;}
.at_out li a{ text-decoration:underline; color:rgb(0 102 204); list-style-type:none;}
.pc_none{ display:none;}
.sp_none{ display:block;}
var xhr = new XMLHttpRequest();
xhr.open(“GET”, ‘https://blog.seesaa.jp/contents/bmlist.txt’, false);
xhr.send();
var blacklist = xhr.responseText;
var url = location.host + (location.pathname == ‘/’ ? ‘/index.html’ : location.pathname);
if (blacklist.match(url)) {
document.write(”);
} else {
document.write(”);
}
引用元: https://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1618232509/
Source: mindhack
【感動】妻「浮気したら……呪うからね」夫「す、するわけないだろ!」